実は使える意匠権の話


様々な製品の形状等を保護できます

 意匠制度は、「デザイン」を保護する制度です。

 デザインというと、プロのデザイナーが作成したものや、芸術的な美しさが求められると考えてないでしょうか。

 意匠権で保護されるデザインは、上記のような高尚な一部のデザインに限定されるものではありません。

 例えば、電卓の外観、PC用のマウス、自動車のボディ、釣用リール、釣り竿など様々な商品(工業製品)のデザインが意匠権で保護されています。


釣用リールを例に

 釣りの際には、釣り竿にリール(糸巻機)を取り付けて釣りをしますね。リールは知的財産権で保護されていることが多い製品です。私が保有している釣用リールも、意匠権で保護されています。

実は使える意匠権の話

 

 どの部分が意匠権で保護されているのでしょうか。答えはこのリールについては、一つの意匠権ではなく、複数の意匠権でリールの複数の部分が、多重に保護されています。それだとわかりにくいと思いますので、私が面白いと思った「TWS」(登録商標)と名付けられた可動式のリング状の部品についてご紹介します。

TWS(登録商標)とは?

 以下に掲載する写真で薄緑色で着色していない「金属製のリング」があるのがわかるでしょうか。これがTWS(登録商標)と名付けられた部品です。TWSは、T Wing Systemの略で、T型をしていることからこの名前が付けられたのだと思います。

 釣りをするときには、釣り糸の先端に取り付けた仕掛けやルアーを釣り竿を使って水面に投擲します。仕掛けが着水すると、仕掛けを水中に沈めて魚が掛かるのを待ちます。魚が釣れなければ、リールのハンドルを回して、釣り糸をリールのスプール(糸巻)に巻き取って、再び仕掛けを水面に投擲します。以後、これの繰り返しですね。

 仕掛けを投擲するときには、リールのスプール(糸巻)に巻き取られている釣り糸は、投擲された仕掛けの重みに引っ張られて、「金属製のリング」を通って、リール外に巻き出されていきます。投擲するときには、以下の写真のように「金属製のリング」が手前に倒れて、リングの孔径が大きくなります。孔径を大きくすることで、釣糸が「金属製のリング」を通る時の摩擦抵抗が小さくなり、投擲距離が伸びやすくなります。

・投擲時

実は使える意匠権の話

 一方、仕掛けを巻き取るときには、以下の写真に示したように、「金属製のリング」が写真の上方に回転して起立し、「金属製のリング」の孔径が小さくなります。正確には「金属製のリング」のスリット状の孔の部分に釣り糸が通るようになります。釣り糸をスプール(糸巻)に巻き取る際には、孔径が小さいほうが、釣り糸の位置が左右にずれにくくなり、スプールにきれいに釣り糸を巻き取ることができます。

・釣糸を巻き取るとき

実は使える意匠権の話

 まとめると、TWS(登録商標)は、投擲時には金属製のリングが前方に倒れ込み、巻き取り時には後方に立ち上がり、ガイド孔の孔径を場面に応じて切り替える、可変機構を備えるガイド孔なんですね。

他社品は?

 上記のTWS(登録商標)はグローブライド株式会社が保有する意匠権によって保護されており、私が知る限り、他社製のリールには搭載されていません。他社製のリールでは、以下の写真のように釣り糸を案内するガイドは「小さな丸孔」になっているのが一般的ですね。ちなみに以下の写真は、TWS(登録商標)を搭載していない同社の廉価モデルになります。

実は使える意匠権の話

意匠権の上手な使い方

 上記のTWS(登録商標)が他社のリールとの差別化要素になっているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。他社は、TWS(登録商標)と同じ形状のガイド(レベルワインダー)をリールに搭載することができないのですから。

 他社のリールは、TWSのような釣り糸のガイド孔の可変機構を備えておらず、ガイド孔の形状の点で機能性において劣りやすくなります。この点において、他社製のリールと差別化することに成功していると思います。

 また、ガイド孔は、リールの目につく位置に配置されており、T字状のTWS(登録商標)がリールデザインのアクセントになっています。TWS(登録商標)の形が、グローブライト株式会社のリールであることを示す一つのアイコンとしても機能していますね。つまり、デザイン面でも他社製のリールと差別化することに成功しているわけです。

意匠権と特許権の併用

 実は、グローブライド株式会社は、上記のTWS(登録商標)について、意匠権による保護だけではなく、特許権も重ねて取得しています。例えば、特許が無効になっても、意匠が有効であれば、製品が真似されないように保護できます。その逆、つまり、意匠が無効になっても、特許が有用であれば、製品が真似されないように保護できます。このように、意匠権と特許権とを併用することにより、製品が真似されないようにより手厚く保護することができます。

 重要なのは、上記のTWS(登録商標)のように、技術的な要素を備えるものは、特許権及び意匠権のいずれでも保護できる点です。技術的な要素を含むから意匠権では保護できないといったことはありませんので、意匠権も有効活用してみてください。

意匠権は手軽

 意匠権は、特許権に比べて、手続負担と費用負担が抑えられやすいのが特徴かと思います。

出願書類がコンパクト

意匠出願では、特許出願に比べて、出願書類のボリュームが小さくなるのが一般的です。書類作成費用を抑えることができます。

審査請求料が不要

意匠出願では、特許出願とは異なり、出願審査請求の必要がありません。

維持年金が安価

意匠権の維持に必要な登録料(維持年金)の額も、特許権に比して、低廉に設定されています。

意匠権で保護できるもの

 今回は、例としてリールを取り上げましたが、工業製品を中心にいろいろな物が、意匠権で保護されます。変わったところでは、形状が従来とは異なる「タイ焼き」の意匠出願の代理を行い、意匠権にしたことがあります。タイ焼き以外にも、食品の意匠登録例も多数ありますね。他社と差別化できるような形をした食べ物を創作した場合などにも意匠権が使えます。

 意匠法改正により、建築物の意匠や内装の意匠まで、その範囲は拡大しています。他社の商品との差別化に、意匠権を利用されててみてはどうでしょうか。